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LIFE

by 綾戸智恵

綾戸智恵による曲紹介

〈 14 Stories In My Life 〉

1.New York State Of Mind

Some folks~ いきなり大好きなこの曲!私がアメリカにいる時マンハッタンには2年だけいたんやけど、あとはずっとブロンクスでした。230丁目、①か⑨トレインで降りたらアパートに戻る途中にアイハーフというパンケーキ屋があって、よくポテトパンケーキをテイクアウトしてました。サワークリームを山ほどかけて食べる。その頃私は55キロほどあって、まさしくヘビーニューヨーカーやったね。歌うたび思い出すよ。この歌の中で I need a little give and take~ ここ、ここがニューヨークらしいなぁ、と思う。”日々がだんだんわかってゆく 何が今必要なものか少しづつ 小さくてもいい友達との協力が大切 一人じゃ生きていけないよ!時はどんどん進むんだから楽しまなきゃ 生きなきゃ” 最後には、マンハッタン・クイーンズ、ブルックリン、ブロンクスそれにエリス島、いや、少し長居しすぎたかなぁ、さあ、みんなもグレイハウンドに乗ってお連れしまひょか、ニューヨークへ。

2.Amazing Grace

みなさん、この曲ほんまにAmazing!「実は」「聞きたい」「実は、あの、その」「早くー」

実は、このイントロオルガンとピアノ弾き語り別日に録ったんです。ピアノ弾き語りをテープあたま1分間ほど空けて先にとったのです。翌日オルガンに座りプープーププププーーーーーとイントロ弾き終わるとアーーーメーーーと私の声。ミキサールームはみんなビックリまなこ。何もわからない綾戸は弾き終わるとルームにかけ入り「なんや、なんや?」「綾戸、編集する前にぴったりきてしまったよ~、oh my God!こんなこと初めてダギャー」と伊藤プロデューサー、ホントAmasing!私はこの日のために、この B 3というオルガンを初めて弾きました。ピアノの時でもタッチは強い方なのでイヤー、オルガンは大変大変。ちょっとでも触れるとブー、ちょっと早く指を離すとブチッ、押しても引いても音量は変わらない。なんせわがまま。焼き鳥屋で知り合った中村君、2度目にお会いした時、すでに私のオルガンの先生!それは先生!偶然の必然の偶然にハレルヤ!

3:BYE BYE BLACKBIRD

いきなりゲスト、エトー。おはよーとまゆげを / \ こんな風にしてスタジオ入り。ドラムの前に座れタイムを出すと \ / こんな風。なんや、こりゃ!まあプレイ中こんなカッコよく変身する人いないよね。ブラシで私の脳みそをシャッシャッシャッシャとドワー。1stコーラスでいきなりなんやわからんスキャット。これもみんな野生児エトーのドラムのせいです。あまりのグルーヴにアヤド、グルグルBlackbirdにされました。エトー、ゴキゲン。バイバーイchin 聞き逃さないで。

4.TENNESSEE WALTZ

イントロでもうわかるよな、はい、テネシーワルツです。なつかしーい、昔エリチエミさんで日本でも大流行。え、初めて聞いたって?ゼネレーションギャップ、ショック!ストーリーはそんなに複雑じゃないけど、けっこう複雑な気持ちを歌った歌やね。私の場合とった方かとられた方かは内緒やけど、友達に「これは私のカレ」なんか言うて紹介されて、次の日からその友達とカレの動きが変ー、そりゃ大変。でもそんなきつい内容なのにこんなきれいなメロディー。少しさみしさが救われるような気さえしますわ。

「イヤー、救われへん」。

5.YOU'VE GOT A FRIEND

みなさんいわく「知ってる知ってる、この曲キャロル・キングの」はい、「天に向かってみんなで歌う」という考えで私はよくゴスペルを歌います。幼稚園のころからずーっとこの種の音楽が好きでやってきました。N.Y.にいるころは毎週教会で歌ってたけど帰国してからはなかなかチャンスがなかったね。3年程前から私もクワイヤーを作り、チロチロやってたんですわ。今回このうちから金沢のANOINTYとK-WISH、2つのグループが参加決定!クワイヤーのことは最後にまた書きます。

PS:この曲にもう1曲Precious Loadという曲をサビパートに歌っています。

私は疲れ 弱り まっすぐに物事を受け取れなくなっている

こんな私をどうぞ助けて 心配はない あなたの友達はすぐそこにいるよ

いつでもどこでも呼べばあらわれるよ さあ

こんな歌詞みんなでうとーたらガーと盛り上がるしかないよなぁ。

6.LOVE LETTERS

イントロでLove letter~ カナダでなくあなたから!うちの会社のアシスタント、ウゴーはこれ聞いて「いいですねー」と目をつむりよるんです。ほんまにわかっとんのかいな?でも26才の乙女にはそんな風に聞こえるみたいよ!

ps: 横で聞いてた50才のおっさん(社長)までも「いいねー」おっさんにもそう聞こえるみたい!!!♪♪♪I kiss the name that you sign?「わかるよなー」伊藤さん!あんさん、やっとたんちゃうの?

7.ROUTE 66

CDも中ごろになるとイエーイなんて言いたくなるよね。Let'sリラックス!ルート66だよ、マイルス・デイビスが生前この歌を歌いたかったんやそうです(グラディ・テイトがそう言ってました)。国道66号線がどんなハイウエーイなのかって?町から町へずーっと続くんですよ。渋滞もなく、イェー、イエーってかんじかなぁ。環八とはエライ違いや。目つぶってみて。みんなでL.A.に行こうよぉ。

ps:ティーンエイジのころ私はL.A.にいてルート66は走ったことあるけど、サンセット77は見つけられませんでした。え、サンセット77知らんの?(年がばれる!)

8.I COULD HAVE DANCE ALL NIGHT

ここでまたグレートゲストになってしまったんです。本当は今病気のトコちゃんを見舞うつもりでこの曲を選んだんやけど、タップのところどぉーしても彼でないとと家で寝ていたトコちゃんをタタキ起こしてお願いしてしまいました。だもんでグレートゲストと書いたんですが、トコちゃんの方が私のレコーディング見舞いに来てくれて、すんまへん。最初、トコセクステットでもゲストに来てくれる宇川さんがタップやってくれたんやけど、あまりのオジンタイム(リズムテンポのこと)にイヤー、ギブアップです。私と宇川さん二人足しても50才ですから(アレ?)ジィージカッ ジィージ カッ おどれとトコトコリン~。それとオープニングのところ、どぉー?「ザッツエンタテーメント」でMGM、「プランを変えて」でフレッド・アステア。「雨に唄えば」でジーン・ケリーでも今回は~。おしゃれー(自分でよろこぶアヤドです)。

ps: 町の声ひそひそ「アヤドさん勇気あるというか怖さ知らずというかよくあれだけのドラマー、タップで呼んだもんだよなぁ」「それがこわいのよ」

それでもトコちゃん、ジィーージ ジィーージ。ありがとう。We Love You!

9.MR. BOJANGLES

この曲、カントリーウエスタンなんだって、何もわかってないアヤドです。これ5コーラス全部でストーリーなんですよ。簡単に意味、紹介したいです。

ミスターボージャングー知ってる 白髪あたまにシマシマのシャツ大きな吊りズボン 古びたくつ

みんなのためにおどってくれるよ 高く高く飛ぶ 

ニューオーリンズだった彼 目に彼の年齢が見える 彼に名を聞くと ”ボージャングーさ”

はにかみながらズボン吊りをもちあげ また 高く 高く 飛ぶ そして15年連れ添った愛犬

ずーと旅も一緒だったのに今はもういない でも彼が高く飛ぶとき そこに愛犬もいそうな気がする

そんなボージャングーは いつもギグマネーはたいていバーでの飲み代 

でも彼は”ちょっと ちょっとだけさ” そんなボージャングー ずっと踊ってる ずーーーっと

10.EVERYTHING MUST CHANGE

この曲はランディー・クロフォードで初めて聴きました。もう、10年以上前かなぁ。ずーっとそれ以来うたっています。

すべてのものは変わる 変わらないものは、ない 若さもいつかは老い、冬もいつかは春になる。

どうしようもなく、時だけ前に進んでいくよ。

人生にはっきり分かってしまっているもの、そんなにあるもんじゃない。

ただ雨(涙)が暗い雲から降り、のちに太陽(笑顔)がそそぎ、空を自由な鳥(行動)が飛んで行く

これぐらいかなぁ。

でも、やっぱりすべてのものは、変わっていく。音楽?音楽はわたしを悲しくも嬉しくも涙させてくれる。

ええうたやねぇ。

11.FOR ONCE IN MY LIFE

このアルバムの”ライフ”は、この曲からとりました。シナトラで聴き、スティーヴィー・ワンダーで聴き、グラディス・ナイトでええうたはみんなうたいたいんやね。私もうたわして!”ライフ”って人生とか生活とかいろいろ訳があるけど私の場合は、日々、そうhibi、そんな感じやね。

人生に一度でいいから、誰かに「あなたが必要」と言われたい。ええ歌詞やないの。そんなふうに考えると、1曲目の〈 New York State Of Mind 〉でも2曲目の〈 Amazing Grace 〉も3曲目も4曲目も5曲目も、全部”ライフ”が感じられるよね。アメリカの雑誌に「ライフ」とか「タイム」ってあるけど、そう思うとこの”ライフ”もタイムも人を助けたり、無視してどんどん行ってしまったり。生きる時を大切にしたいです。

12.FEVER

そろそろこのアルバムも3曲をのこします。なんとまたあの野生児エトー登場です。それに「え」「まだ」「何よ」「え」「何これ」そうです。杉本登場。ベースとドラム。こうやって聴くとベースのもっているスゴサがよくわかるでしょ。そうでしょ、そうでしょ。この曲5コーラスまであって、これで1つのストーリーやから、1コーラスも、のがせまへんのや、でも長い、レコーディング中1コーラスだけ、はぶこーか?そうするとエトー君「いやや、ロミオジュリエットもポカホンタスもホカスモンカ!」だす。そこで智和君「よーし、ジャーボク4ビートでチエさんグルーヴさせちゃいまョ」

おみごと!ネツでソー Fever アーーーー。

摂氏も華氏もガァーーーーゴォーーーーー。

13.YOZORA NO MUKOU

さあ、どうだ。アヤド、スマップ大好き。

いや、びっくりしないで下さい。ただこの曲大好きなんでうたいたかったんです。プレーも聴くのも音楽のジャンルは自由ですね。とにかくこの曲、元来美しい、素敵です。今さら私が訳さなくてもスガシカオさんに聞いて、彼をリスペクトして、まっすぐに訳したつもりです。アレンジは?レコーディングの日、その場でやりました。私のうたう夜空ノムコウ、スマップもきいてぇ~。

ps:この曲を歌うお許しをいただき、どうもありがとう。とてもうれしかったです。

14:LET IT BE

最後はこれ、石響のライブのとき、お客さんからもらったリクエスト、それがこの〈 let it be 〉です。もう、そこでうたいおわったその日、レコーディングをすることで決めました。音楽はミュージシャンとお客さんとで作るんですよね。アレンジ?あぁねぇ、レコーディング10分前に始め!さぁっ、こんな感じ!なんて、言いながらしました。みんなの気持ちが一体になるとこんなになるわけでございます。この一瞬にいままでの練習と集中力がむくわれる、そうですわ。でもこれにはかげにまだコーラスがいます。ありがとう、かおりちゃん(トコさんの弟子)それに、京都のコタケ、チオリちゃん。そしてあのフィーバーのベーシスト、スティービー杉本!エトーも来たかったんやけど、大遅刻!アフリカは遠い。うたい終えるとみんな大感激で嬉しそうでした。Something 何かあるんですよ、音楽には。

エンジニアのひろがねさん、40人以上のコーラス、みごとなミックスです。なんでも1人じゃできないね、みなさんありがとう。

K-WISH:金沢芸術村が中心にあり、私は雇われこーしをしています。

アノインテッド:ヤマハの音楽教室の先生が中心にできています。今では口コミでいろんな人も増えています。みんな音楽(うた)のプロじゃない人ばかり。高校生や主婦やOLといろいろです。でも1つだけ共通点があります。みんな音楽ダーーーイスキです。

K-WISH:

赤井真希子 江村美紀 笠木優子 加藤知子 河野和子 斉田英子 斉藤睦 坂井聡美 桜井純子 行水久美子 白尾まつ 田中恵子 西友美、西嶋恵、巻田美智代 松村京美 森田美美 守山奈美 山田詩子 吉村彩子 吉本恵津子

ANOINTED MASS CHOIR:

喜多泰子 杉本弥栄子 高木章代 鷹栖知可 斉藤由香 中田理恵 喜多明乃 中川明子 村田由紀子 窪田敏子 越さおり 加藤知子 辻庸子 中村あづさ 中村朋治 村梶聡美 斉藤英樹 

Friends:

小竹直 松田頂緒厘 斉藤菜穂子 山田香織 杉本智和 宇郷知恵

まとめ:

全ての曲、テイク1からテイク2でOK。ライブの感覚です。今回初めてトライがたくさんありました。CDの曲順も3回も4回もやり直しばかり。これは正直言って苦労しました。皆さんいかがですか?今、3月16日、下関のホテルで書いています。ツアー中ですねん。書きたいこともっともっとあるんですが、我慢します。あっ、もう一つ、このレコーディング3日間終えた最後の日、私には似合わずミキサールームで居眠りをしてしまいました。夢?見ましたよ。その時見た夢は、4枚目のアルバムの夢でした。

じゃ、私もう寝ます。次回のライブで皆さんお会いしましょーーーー。ありがとう!

スペシャルサンクス:

トコとこちゃんようこちゃん、ずーーーとずーーーと、ありがとう。

えとーーーーI LOVE YOU!

杉本ーーYou are so beautiful!!

アノインティ & K-WISH、ずっとこのままこのまま、自然にね!

南博くん、練習にピアノ使わせくれてありがとう。

中村くん、オルガン続けるから又、教えてね。

全てのミュージシャン、いつもありがとう。

児山さん、今回もあやどせーいっぱい頑張りました。

しゅんちゃん、2人のジュニアによろしくね。

一志さん、もっと、つきまとってね(カズによろしく)。

あまのさん、何かの縁や、まあよろしくおネゲーシマス プロノアマノさんへ。

ボデーのママ、お寿司おいしかったよ!

中川ようさん、カレンなようちゃんカリンありがとう!

Yoh Tokura、スマップもびっくり!

かまの先生、ガンバリまーーーす(順天堂Hos)

カメラマンの依田さんメイクの赤間さん、美の追求?私をどうするの!

エンジニアひろがね、私でよければ・・・・。

アシスタントのみなさんありがとう。

デザインの萩原さん、小林さん大キニ入りです。

EWEのみんな売ってきてやーーーー。

いとうさん、どえりゃープロデューサーダワ、カンシャシトルワ。

先生、3日間ずっと見守ってくれてありがとう。あなたがおるだけで体の底から勇気が湧きあがってくるようです。

母とイサくん、長く留守ばかりでごめんね。いつも心の支えです。

”がんばれ綾戸、がんばれチエちゃん”

1998年夏リリースされた「 For All We Know 」から一気に爆発した格好の綾戸智恵(当時綾戸智絵)ブームはいよいよ火に油が注がれた格好になってきた。綾戸智恵が行くところいまではどこのコンサートでもライブでも口伝てに噂をきいたらしいファンがどっと押し掛けるようになった。銀座の「ソミド・ホール」での定例のコンサートなど毎回ぎっしり立ち見が出る人気で、どうやら今後は二日連続公演にするらしい。こうした綾戸智恵熱に話題にめざといマスコミが黙っているはずもなく、天下の NHK が BS チャンネルのニュースで綾戸智恵を紹介したのをはじめ、3月10日にはテレビ東京が水曜日夜のドキュメンタリー番組「人間劇場」で「天から降り注いだ歌:ジャズ歌手 綾戸智絵元気の贈り物」と題してガンを克服して歌うことに生き甲斐を見つけた彼女の素顔を紹介した。このあと4月下旬にはNHK 総合テレビの「トップランナー」が綾戸智恵にスポットを当てた番組を放送することになっていて、こうなると彼女はいよいよ1999年の時の人に浮上することになる。綾戸智恵が今の日本ジャズ界に熱いエネルギーを注いでくれている事は素晴らしい事だ。

一方綾戸智恵の CD 吹込み活動も精力的に続いている。1998年末にリリースされた2枚目のアルバム「YOUR SONGS」がまだ店頭でホットな話題を振りまいているというのに、早くももう3枚目のアルバム「LIFE」が完成した。これまでの2作が気心のあった伴奏陣との顔合わせで、綾戸智恵のジャズ・シンガーとしての資質にスポット当てるという企画だったのに対してこの3枚目のアルバムは彼女が得意とするピアノの弾き語りを中心にゴスペル色の濃い内容になっているのが何と言っても筆者には嬉しい。1997年秋に初めて綾戸智恵のライブを聞いた時から彼女がピアノを弾きながら歌うゴスペルにぞっこん惚れ込んでいた筆者としては「待ってました」と言いたい気持ちである。ニューヨークに住んでいた時期にはゴスペル・クワイアーのメンバーでもあったという綾戸智恵の歌唱には歌ってもゴスペル調にしてしまうというそれこそ天から降り注いで才能がある。誰よりもそのことをよく知ってるのは綾戸智恵のファンかもしれない。このアルバムの最後を飾るレノン=マッカートニーの〈Let It Be〉をゴスペル調で歌ってほしいと綾戸にリクエストしたのはじつは彼女のファンの1人だった。この曲と〈You've Got A Friend〉では40名からなる臨時編成の合唱隊が綾戸智恵と共演しているのが圧巻だ。さきに触れたテレビ東京のドキュメンタリーでも紹介されていたが綾戸智恵は定期的に金沢に赴いて歌うことが好きな仲間たちにゴスペルを指導してきた。ここで聴かれる合唱隊のほとんどは録音当日金沢市から手弁当で駆けつけた綾戸智恵の門下生たちだ。この2曲からは歌うことの喜びを全身で表している綾戸智恵と仲間たちの歓喜の様子が感動的な大合唱となって熱く伝わってくる。

アルバムの聴きどころはほかにもたくさんある。パワフルな〈Amazing Grace〉、ソウルフルなピアノ演奏が聴きものの〈Yennessee Waltz〉、ディープなフィーリングで歌われる〈Everything Must Change〉ドラムスの俊才江藤良人と痛快なスキャットでデュエットする〈Bye, Bye, Blackbird〉、杉本智和の強靭なベースにサポートされて豪快にスイングする〈Fever〉、ドラムスの日野元彦が珍しく得意のタップで綾戸智恵とデュエットした〈 I Could Have Danced All Night〉など、どれもが素晴らしい。このうちあえて日野元彦が聴かせたタップについてつけ加えておくと、綾戸智恵からタップで参加して欲しいと頼まれた日野はスタジオに”砂”を運ばせて、床にまき、その上をタップ・シューズでゆっくり滑らせて”ザー”という響きを生み出すテクニックを聴かせた。これは米国の天才タップ・ダンサー、ジミー・スライドが得意にした技巧で日野元彦がそれを披露したのを目の当たりにして筆者は日野のアーティストとしての奥の深さに改めて驚かされた。スローテンポのこの曲で綾戸智恵とタップで共演するために日野がみせた秘芸だったのだ。

綾戸はドキュメンタリーの中でも語っていたが「抗がん剤で声帯をやられたときから”音程”を歌えないのなら”歌詞”を歌おう--と気持ちを転換させた」という。だから彼女の歌詞へのこだわりは尋常ではない。ボビー・トゥループの名曲〈Route66〉では途中で出てくる土地の名称にも綾戸智恵はこだわっていた。米国で生活していた時期にカリフォルニアに住んでいたこともある綾戸はSan Bernardinoの発音をここではあえて地元の人々の発音どおり両方の”R”を強調した呼び方で歌っている。綾戸智恵の歌詞へのこだわりはそればかりではない。まさに絶唱と言いたくなる冒頭の〈New York State Of Mind〉では綾戸の気持ちが歌詞に乗り移って歌はもう爆発している!たとえば第1コーラスのブリッジから最後の8小節にいたるあたりでの綾戸の気持ちの込め方は聴いていて思わず目頭が熱くなり、鳥肌が立つ思いがする。そういう綾戸智恵がSMAPのファンだというのは驚きだった。SMAPのヒット曲で知られる〈夜空ノムコウ〉をわざわざ英詞をつけてジャズ風に歌ったのは誰もが知っている若い世代の人気曲を歌うことでジャズを知らない子供たちにまで自分の歌を聴いてもらいたいという気持ちからという。綾戸智恵ーーどこにエネルギーが潜んでいるのかと不思議になるほど小柄な彼女が誰も果たせなかったような偉大なる成果をいま確実に日本のジャズ界にもたらしはじめている。がんばれ綾戸!がんばれチエちゃん!

児山紀芳(Kiyoshi Koyama)1999年3月16日記

She is So Cool!

綾戸智恵の唄には、モノクロームの写真で見るブリックリンの呼吸が息づいている。そこではむしろモノクロであることで、心の陰影が強調され、空を青いと感じさせる描写力が存在する。そしてモノクロームであるはずなのに、ビブラートが無数の色彩となって天に昇っていくのが見えるのだ。98年に発表された2枚のアルバムを超えて、今作「LIFE」での綾戸智恵の歌声は、私の心をわしづかみにした。

「For All We Know」で今までにないスケールをもったシンガーの出現に驚きの声をあげ、「YOUR SONGS」で彼女が歌い続けてきてくれたことに心から感謝を捧げたのだったけれど、今作での彼女はその弾き語りのフォースフルな魅力をあますことなく発揮し、装飾を削ぎ落とせるだけおとしたところで自身の唄を歌ってくるので、その歌声がよりくっきりと輪郭をもってて迫ってきたのだ。

綾戸智恵の唄は、So Cool。その独自のヴォイスのなかで懐かしさと現代性が結びついていて、どんな曲も自分のものにして差し出す力がある。だから彼女のレパートリーは、無尽蔵だ。ビリー・ジョエルの〈 New York State Of Mind 〉、キャロル・キングの〈 You've Got A Friend 〉、SMAP の〈夜空ノムコウ〉から、レノン-マッカートニーの〈 Let It Be 〉が一列に並ぶ選曲は、綾戸智恵にしかできない技だ。

それに彼女の歌声はどうだ。〈 Amazing Grace 〉では、アーシーな響きを持つオルガンでのイントロに導かれるようにして、ひとつひとつの言葉が祈りに化身していく。まるで映画のワンシーンのように、綾戸智恵語りかけからスタートする〈 I Could Have Danced All Night 〉はたっぷりとしたテンポの歌唱。それでもスイングし続けるその力量は、見事の一言に尽きる。小粋なピアノ、日野元彦のタップとの共演という名アイデアがそれと手を取り合って、このナンバーを特別なものにしている。

また〈 Bye, Bye, Blackbird 〉できかせるスキャットの、迫力とタイムの素晴らしさはどうだろう。彼女は日本のジャズ・シンガーで、スキャットのできる数少ない一人であり、ことに彼女にかかるとリズムが3次元の立体的なものだと思えてくる。

これができるのは、彼女に英語力があるからではない。音楽を音楽として大きく掴むことができる、その視野の広さ・視点の高さからくるものなのだ。そのいい例が〈 Fever 〉だ。ここでの綾戸の濃密な官能には、くらくらしてしまう。でもそれは、彼女がそこに情感をこめて歌ってるだけで可能になることではない。間の取り方や、音楽のどこでどのことばを歌うか、その設計が心の中で美しくできているからなのだ。江藤良人のドラム、杉本智和のベースに寄り添いながらも、音楽空間を自身の手中に収め、その空間の中で自在にプレイする彼女なのである。

〈 夜空ノムコウ 〉には素敵な英詞をつけ「明日」への希望の予兆としての夜空を歌い、〈 Everything Must Change 〉では切々と人生の不条理を歌う。 彼女が「冬から春に季節が移ると」と歌うと、そこには春の小さな花が咲きはじめ、実際にハミングバードが飛んでくるのが見える。それは音楽が本来持っている力でもあり、綾戸智恵の歌声がなせることでもある。

このアルバムのハイライトに何といっても40人に及ぶ彼女の生徒さんたちによるクワイヤと共演した、ゴスペル〈 You've Got A Friend 〉と〈 Let It Be 〉だろう。その歌声は天にも届く力強さと一体感を持ち、聴き手にとっては気持ちが倒れそうな時に取り出してきけば、いつでも気付け薬になって励ましてくれるであろう、大きな愛にみちている。

歌詞も替えてあり、〈 You've Got A Friend 〉では私は強くなんかない、疲れているの、どうぞ私の手をとって、と神に素直に願い、その祈りはいつでも叶うことが伝えられる。神こそは最良の友、そんな言葉を思い出す、プレシャスな40人分の笑顔が見える〈 You've Got A Friend 〉だった。

楽しんで作られたアルバムは、CD になってきいても、笑顔が見える。

どんな感じを歌っても、涙を涙のままにしておかない、笑顔で歌い終える綾戸智恵のつやつやの顔が見えてくる。

I Received it。受けとったよ、と私も彼女に声を掛け返したい。 〈 Let It Be 〉で「CD を聴いている方も私たちと一緒に歌いましょう」と、彼女が声を掛けてくる。そんなわけで、このアルバムは、じっと座ってきいているわけにはいかないのだ。文章なんか読むのを止めて、そろそろ、私たちも唄に加わりましょうか。

中川 燿(Yo Nakagawa)1999年3月記

綾戸智恵3rdアルバム「LIFE」(Re- Master)

2020.05.29よりストリーミング・スタート!

代表曲「テネシーワルツ」、「アメイジング・グレイス」やゴスペル・クワイア参加の「You've Got A Friend」SMAPのヒット曲「夜空ノムコウ」など、いつの時代も綾戸智恵がステージで大切に歌い続けてきたレパートリーが収録された傑作3rdアルバム!

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