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聖者の眠る街

by 綾戸智恵

現代版少年サンボ、そんな言葉で始まる。悲しい映画なのか心温まる映画なのか。とにかく今日1日を生き延びるため、屋根のある寝床にありつくために行き場のないホームレスは巨大なシェルターへ押し込まれる。そこで出会うジェリー(ダニー・グローヴァー)とマシュー(マット・ディロン)。舞台はニューヨーク。わたしは35年ぐらい前マンハッタン・イーストハウストンの辺りにアパートを借りていた。今は治安も物価もアップ、でも私がいた頃ははっきり言って「ヤバイ」地区。松葉杖や窓拭きグッズを持ち地下鉄Fトレインの2nd Av.のいう駅へと流れるホームレスと呼ばれる人たちを毎朝見る。御近所の私には「how ya doiin?」と声がけしてくれる。ある意味生きる強さを見たのを覚えてます。

聖者の眠る街(1993年公開 アメリカ映画)

監督:ティム・ハンター、製作:デヴィッド・V・ピッカー、ネサ・ハイアムズ、製作総指揮:ライル・ケスラー、カール・クリフォード、脚本:ライル・ケスラー、撮影:フレデリック・エルムズ、音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード、出演:マット・ディロン、ダニー・グローヴァー、リック・エイヴィルス、ヴィング・レイムス、ジョー・セネカ、ニーナ・シマーシュコ、バーニ・ターピン
監督:ティム・ハンター、製作:デヴィッド・V・ピッカー、ネサ・ハイアムズ、製作総指揮:ライル・ケスラー、カール・クリフォード、脚本:ライル・ケスラー、撮影:フレデリック・エルムズ、音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード、出演:マット・ディロン、ダニー・グローヴァー、リック・エイヴィルス、ヴィング・レイムス、ジョー・セネカ、ニーナ・シマーシュコ、バーニ・ターピン

この映画を久しぶりに見て当時を思い出し、見終わって不覚にも嗚咽するほど涙し、鼻の奥が痛くなった。キャストはいろいろ出てくるけど、この二人しか見えないんや。たぶん監督の狙いとちゃうかなぁ。リーサル・ウェポンのダニー(ダニー・グローヴァー)があまりのはまり役で、しかも私的に伝わりやすい語調だったので字幕スーパーがなくても画中に吸い込まれた。そしてドラッグストアボーイでも名演のマット・ディロンの演技が自然過ぎてほんま素晴らしい。幼なじみに会うシーンで躊躇と話したいという気持ちとで心がシーソーになってる彼が私の母性本能をグワァーとゆるがし、ジェリーのせりふをいただくなら「My son、it's all right」と抱きしめたくなる。そしてこの映画はただたんにアメリカのホームレスを描いているんやなく、ひょっとした出会いから父と子のようになっていく、中でもこのせりふ「医師に精神病と言われた」とマシュー、「何を根拠に?」とジェリー、「声が聞こえる」とマシュー「声が聞こえてなぜ悪い、ジャンヌダルクもモーゼも神の声を聞いた。君もきっと聖人なんだ」とジェリー。この中にはポジティブがいっぱい詰まっている。ホームレスで今は社会から外れていても、それでも今を生きよう、俺でよかったら共に生きよう、どんな状況でもそれなりに生きていく。助け合いながら。ジェリーの膝はベトナム戦争で受けた弾の破片が残っていて慢性的に時には精神を蝕むほど酷く痛む。痛み止めを神からのギフトと言い「ハレルヤ」、、ここにはもう一つのアメリカの痛みがある。トム・クルーズの「7月7日に生まれて」という映画をみましたか?ベトナムに行った時は名誉やったのに帰ってきてみたら帰還兵は政治の中で英雄どころかとても怪我はもちろんPTSDや精神病に苦しんだり政府や軍の責任なのに理不尽な戦争責任を押し付けられたり悲しい立場に追い込まれる。アメリカの痛みだ。

映画はジェリーのナレーションではじまります。人は生きる中理不尽な痛みや辛く悲しい事から逃れられない。ジェリーはそれを受け入れてでも今を生きる。そんな彼を見て少しづつ生きることに正面から向かっていく事を覚えるマシュー。わたしは自立とは一人で立てる(生きる)事やなく他の人たちとも関わっていける事だと思う。まさにこの映画ではジェリーがマシューを助けながら生きている、いやいや同時にマシューの存在がジェリーの生きがいににもなっていく。だが映画はなんとあっけなくマシューを死なせてしまう。思わず画面に「なんでぇー」と私。そうかタイトルの眠るとは、こういうことなん?でもみなさん、マシューの死は最後の晩餐でなく最後の写真そして聖者の誕生、まるでキリストと少し重なるのか、と思いました。マシューがシェルターでタバコを喫うと、俺にもくれ俺にもくれと次々にシェルターの人たちがやってくる。キリストが魚を与えるシーンと一緒や。マシューが薬が切れて痛むジェリーの膝に触ると痛みが和らいでいく。キリストのhands-onと重なる。最後悪いやつに刺されて死んだ時、ジェリーに抱かれ涙される、まるでゴルゴタの丘の十字架からはなされマリアに抱かれているあの場面や。何よりは、棺桶に入れられロングアイランド湾を渡って共同墓地へフェリーで送られる際、乗船はダメと言われたのにジェリーは忍び乗り一緒に最後の最後まで、まるでマシューの復活を心の中で祈るように「俺は何がなんでも生きていく」とマシューに語りかける。いやーわたしはあっけなくマシューが刺されて死んだと、書いたが、そこがタイトルになる程意味あることやったんや。マシューは登場から透け感がある。生きるのにもっともボトムとなるぐらい大事なもの、アパート?痛み止め?靴?たばこ???????。
サンボとトラとの会話にもあった生きる知恵を支える信仰心、マシューとの出会いか。さすがゴッドプレスアメリカ!かわたしの中でベスト・マット・ディロン、ベスト・ダニー・グローヴァーです。


綾戸智恵
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